小さな成功体験/本 ピアジェに学ぶ認知発達の科学
小さな成功体験が、次の成功体験につながる。子どもの知能の発達の基本理論を援用するとそうした結論が導けます。そして、1990年代以降の脳科学の研究成果により、人は病気(認知症など)にならなければ、死ぬまで脳は可塑性を失いません。この2つのことを理解すると、大人になっても小さな成功体験がとても大切だと思えます。
ジャン・ピアジェ(1896 - 1980)の子どもの知能の発達に関する基本理論では、子どもの発達は継起的に起きることと、体験を類型化しながら習得することが指摘されています。継起的というのは、1つの能力(A)の習得が次の能力(B)を獲得するための準備段階になるということです。常にA→Bという発達経路をたどり、B→Aとなることはありません。体験の類型化でピアジェ理論を理解するうえで重要な概念が「シェム」です。
私の理解では類型化された概念を「シェム」と呼びます。例えば、箸をつかむ、棒をつかむ、ボールをつかむ、服をつかむというように「つかむ」という行為には、つかむ対象物の大きさや素材など多様なパターンがあります。その1つ1つを経験する過程で「つかむ」という行為を類型化して「つかむ」という概念を習得します。「シェム」は「行為(つかむ)のシェム」というような使い方をする言葉です。
参考図書:『ピアジェに学ぶ認知発達の科学』中垣啓(訳・著)2007
小さな成功体験は、いわば「成功体験のシェム」を習得するための1つの体験です。小さな成功をいくつか体験すると、他の成功体験のイメージをつかみやすくなります。つまり、内面的、肉体的両面から行為の調整をしやすくなります。
『楽スルー脳力アップ記録用紙』というものを先日考えました。1桁の足し算を45回行う一種のドリル用紙です。これを何回か時間を測ってやってみると、自分の計算スピードの限界が分かります。その上で、運動(目安:30分間で2km歩く)の後、2時間以内に再度計算をやってみると、自分の計算速度の限界を軽々と突破(スルー)することができるという体験ができます。
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